テレビドラマや映画を見ていると、主要キャストの1人に「無名の俳優や女優」がいることに疑問を感じたことはないだろうか。
なかなか良いポジション(役)なのに、今まで全く見たことない役者が起用されているときは、筆者はまずその役者の「所属事務所」を調べることにしている。
すると大抵は、大手芸能事務所の若手俳優・女優であることが多く、主役や二番手・三番手のバーターとして出演しているのだ。
この「バーター(barter)」という言葉、みなさんも一度は耳にしたことがあるかもしれないが、英語では「物々交換」や「交換条件」という意味を持ち、ビジネス界で広く使われている。
しかし、芸能界においてのバーターは少し意味合いが異なり、「抱き合わせ」と訳すのが適している。
いわゆる「有名芸能人」と「無名芸能人」を抱き合わせて(セットにして)メディアに出演させる方法で、無名芸能人の知名度向上を目的とした手法なのだ。
語源は、「抱き合わせて売り出す=束(たば)にして売り出す」の「束(たば)」からきており、この束を逆さから読んで「バーター」と言うようになった。
「寿司(すし)」を「しーすー」といったり、「銀座(ぎんざ)」を「ざぎん」という芸能界ならではの呼び方である。
業界 | 意味 | 語源 |
ビジネス界 | 物々交換 | 英語のbarter |
芸能界 | 抱き合わせ | 束(たば)の逆読み |
ではここで「バーター」の例をあげよう。
例えば、大手芸能事務所「ホリプロ」に、綾瀬はるかのドラマ出演のオファーがあったとする。
するとホリプロ側は、「綾瀬はるかと一緒にこの新人Aも出してもらえませんか?」と交渉。
制作側は、この新人Aを出演させれば綾瀬はるかを起用できるので、もちろん承諾する。
これが、抱き合わせ商法(バーター)である。
事務所側からすれば、新人タレントを売り出すことができ、また制作側からすれば、高視聴率を取れる綾瀬はるかを起用できるので、どちらもWin-Win関係となれるのだ。
このバーター出演は、ドラマや映画、バラエティなどで当たり前に行なわれており、主役1人につきバーターは2人まで、主要キャストならバーターは1人が相場となっている。
かつては、端役でもオーディションで選ぶことがあったが、現在は不況による経費削減や、コロナの影響でオーディションが激減。
そのため、若手タレントにとってこのバーター出演は、メディアに出られる絶好のチャンスとなっているのだ。
バーター出演で名を上げた俳優たち
今では人気俳優となった「中村倫也」は、同じ事務所(トップコート)の「佐々木希」や「松坂桃李」のバーターとして出演していた。
また、今では国民的女優となった「有村架純」も、同じ事務所(フラーム)の「戸田恵梨香」のバーターとしてチャンスを掴んだのだ。
ジャニーズ事務所においては、バーター出演は常套手段で、ジャニーズが主演を務める作品には必ずといっていいほど若手アイドルが出演している。
このように、大手芸能事務所ほど「抱き合わせ商法」を上手く取り入れて新たなスターを育成しているのだ。
これが芸能界における「バーターの仕組み」であり、無名俳優がドラマに出られる理由である。
もちろんバーター以外にも、プロデューサーや監督・脚本家のコネクションや、純粋にオーディションで勝ち取って出演しているケースもある。
それは各作品によって様々なので、もし気になる俳優や女優がいた場合は、まずはその人物の「所属事務所」を調べてみてほしい。
バーターかどうかは、所属事務所を見れば一目瞭然だ。
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