ワンピースの映画「ONE PIECE FILM RED」の忖度ない感想と「ひどい」と言われる10の理由

画像引用:©尾田栄一郎 / 2022「ワンピース」製作委員会

全世界累計発行部数が「5億部」を突破し、ギネス世界記録も更新し続ける大ヒット漫画「ONE PIECE(ワンピース)」。
日本だけでなく、海外でも60の国と地域で愛されているこのワンピースですが、2022年8月6日(土)にワンピースの最新映画「ONE PIECE FILM RED」が公開されました。
この「FILM RED(フィルムレッド)」は、劇場版としては15作目、フィルムシリーズとしては4作目となる映画で、製作陣が事前プロモーション(告知)に多額の費用をかけていたことから、ワンピースファンの期待値はかなり高いところにありました。
なにしろ「漫画の本編」でずっと謎に包まれていた「赤髮のシャンクス」がポスターのメインですから、期待せずにはいられません。
その宣伝効果もあってか、8月6日(土)に公開された「FILM RED」は、土日の2日間だけで157万人を動員。
興行収入も22.5億円を突破しました。
これは、シリーズ最高の興行収入を記録した「ワンピース フィルムゼット(興行収入68.7億円)」を超える初動であり、更に期待感が高まりました。
その後、公開からわずか10日で、観客動員数500万人、興行収入70億円を突破。
ワンピースの映画史上、No.1の観客動員数・興行収入を「たった10日間」で記録したのです。
しかし、その華々しい興行収入とは裏腹に、観客の感想は賛否を分けました。
Twitterを始めとするSNSでは「期待外れ」「つまらない」「面白くない」「過去一番の駄作」というコメントで溢れ、インターネットでは「ワンピース 映画」と入力すると「ひどい」という関連ワードが出るくらい、批判の嵐でした。
ではなぜ、ONE PIECE FILM REDはここまで酷評されたのでしょうか。
今回は、筆者の感想を交えながら「忖度なし」に解説していきたいと思います。

歴代のワンピース映画の興行収入

まず、本題に入る前に、歴代のワンピース映画の「興行収入」を見ていきましょう。
過去に公開された劇場版は全14作。
それぞれの興行収入は下記の通りです。

公開年

作品名

興行収入

2000年

ONE PIECE

21.6億円

2001年

ONE PIECE ねじまき鳥の冒険

30億円

2002年

ONE PIECE 珍獣島のチョッパー王国

20億円

2003年

ONE PIECE THE MOVIE デッドエンドの冒険

20億円

2004年

ONE PIECE 呪われた聖剣

18億円

2005年

ONE PIECE THE MOVIE オマツリ男爵と秘密の島

12億円

2006年

ONE PIECE THE MOVIE カラクリ城のメカ巨兵

9億円

2007年

ONE PIECE エピソードオブアラバスタ 砂漠と王女と海賊たち

9億円

2008年

ONE PIECE THE MOVIE エピソードオブチョッパー+ 冬に咲く、奇跡の桜

9.2億円

2009年

ONE PIECE FILM STRONG WORLD

48億円

2011年

ONE PIECE 3D 麦わらチェイス

7.9億円

2012年

ONE PIECE FILM Z

68.7億円

2016年

ONE PIECE FILM GOLD

51.8億円

2019年

ONE PIECE STAMPEDE

55.5億円

2022年

ONE PIECE FILM RED


ご覧の通り、2008年までは「よくあるアニメ映画」だったのですが、2009年の「ONE PIECE FILM STRONG WORLD(ストロングワールド)」から力の入れようが変わりました。
2011年の「東日本大震災」の年を除くと、興行収入は平均で56億円程度。
鈴木おさむ氏が脚本を務めた「ONE PIECE FILM Z」に関しては、68.7億円の大ヒットを記録したのです。
その68.7億円を、今回の「FILM RED」ではたったの10日間で抜き去ってしまったわけですから、いかに期待された映画だったのかがわかります。



ONE PIECE FILM REDのあらすじと感想(ネタバレ含む)

(ここからはストーリーのネタバレを含みますので、まだご覧になられていない方はご注意ください)
ではここで、ONE PIECE FILM RED(ワンピース フィルムレッド)のあらすじと感想を述べていきたいと思います。
今回の舞台は、かつて「音楽の島」として栄えたエレジア島で、世界の歌姫「ウタ」がライブを開催するところから物語は始まります。
このウタの歌声を聴きに、ライブ会場には何万人ものファンが集い、その中にモンキー・D・ルフィ率いる「麦わらの一味」の姿がありました。
一方で、ウタの「誘拐」を狙った海賊たちや、潜入捜査をする「CP0」のブルーノ、「海軍」のコビーやヘルメッポの姿も。
そんな中、ライブ中にもかかわらずルフィはウタのいるステージに上がり、12年振りの再会を果たします。
そして突如、「ウタはシャンクスの娘」だということを、生中継を通して全世界に暴露するのです。

いや、ルフィKYすぎるだろ。デリカシーなさすぎ。

ここが一つ目の突っ込みポイントでした。
ウタの生ライブは「映像電伝虫」を通して世界中に配信されていました。
にもかかわらず、ライブ中にステージに上がり、ファンの前で「ウタは大海賊(四皇)の娘」だということを一方的に暴露するのですから。
「ウタの誘拐」を狙った海賊たちがライブを止めて、そこに助けに入るのならわかりますが、ルフィがライブを止めてから海賊たちが乱入するので「順番逆だろ」と思ってしまいました。
その後ウタは、自分を誘拐しにきた海賊たちを一網打尽にします。
そこにはビッグマム海賊団の「オーブン」や「ブリュレ」もいたのですがお構いなし。
挙句の果てには、ゾロやサンジ、ジンベエ、ロビンなどの麦わらの一味まで拘束し、桁違いの強さを発揮しました。

いや、ウタ強すぎだろ。海軍だったら大将クラス。

ここが二つ目の突っ込みポイントです。
いくらシャンクスの娘だといっても、ビッグマム海賊団や「億超え」の麦わらの一味をたった1人でいとも簡単に拘束してしまうのですから。
もしウタが海軍だったら、大将クラスの戦力になっていたことでしょう。

ウタは「ウタウタの実」の能力者

実はウタは「ウタウタの実」を食べた能力者になります。
このウタウタの実とは、「歌」を聞かせた人間を眠らせ「仮想空間」に閉じ込めることができる能力です。
仮想空間に閉じ込められた人間はその事実に気付かず、自ら抜け出すことはできません。
また、気付いたとしても「ウタが眠らない限り」能力は解除されないのです。
更にこのウタウタの実の恐ろしいところは、
■ モニターやラジオ越しでも同じ効果を発揮できる
■ 仮想空間では食べ物や武器など、ウタが望むものを何でも作り出すことができる
■ 寝ている現実世界の人間を操ることができる
■ 現実世界のウタが眠らないまま死んでしまった場合は能力は解除されず、仮想空間にいる人間は一生出られない
■ 音楽の島「エレジア」に封印されている歌の魔王「トットムジカ」を開放することができる
という、数ある「悪魔の実」の中でもトップクラスのチート能力になっているのです。
そもそも、この能力で「ウタウタの実」という名称にも疑問を感じてしまいました。
歌を聞かせた人間を「眠らせる」「奮起させる」「癒す」などの能力であればわかるのですが、「仮想空間に閉じ込める」となれば、例えば「ユメユメの実」だったり、メタバース(仮想空間)というワードから「メタメタの実」などの名称の方がマッチしていると感じました。

ウタは「シャンクス」の血縁関係のない娘

元々、ウタは「赤髪海賊団の音楽家」として、シャンクスと共に旅をしていました。
赤ん坊の頃にシャンクスに拾われたため、シャンクスは「育ての親」ということになります。
ある日、赤髪海賊団は音楽の島である「エレジア島」に訪れるのですが、ウタの持つ「ウタウタの実」の能力でエレジアに封印されていた歌の魔王「トットムジカ」を呼び出してしまいます。
そしてこのトットムジカが、エレジアの住民を皆殺しにし、街を壊滅状態にしてしまうのです。
ウタに責任を負わせたくなかったシャンクスは「エレジアを滅ぼしたのは赤髪海賊団ということにしてくれ」と、唯一生き残ったエレジアの国王「ゴードン」に伝えます。
更には、大事な娘である「ウタ」をこのゴードンに託して、島を後にしてしまうのです。

いや、大事な娘を会ったばかりの老人に託すなよシャンクス。

ここも突っ込みポイントでした。
音楽が栄えた「壊滅前のエレジア」に残すのならまだわかりますが、もう何もないエレジアに、しかも会ったばかりの老人と二人きりにして残すなんて正気の沙汰とは思えません。
そもそも、ウタはこの事件が起きる前にも「ここに残らずシャンクスと一緒にいたい」と自らの気持ちを伝えていました。
にもかかわらず、壊滅状態のエレジアに置き去りにしたのですから、恨まれて当然です。
また、ウタのことを考えてシャンクスは自ら罪を被りましたが、もっと他に方法があったでしょう。
生き残りがゴードンしかいない訳ですから、他の海賊がやったことにすればいいだけですし、わざわざ「憎まれ役」になる必要がありません。



ウタの計画

エレジアに置き去りにされたウタは、ゴードンに育てられることになります。
当時のウタは9歳で、大人になったウタは21歳のため、育てられた期間は
■ シャンクスに9年
■ ゴードンに12年
となり、ゴードンの方が長い「育ての親」ということになります。
ウタはやがて「世界の歌姫」と呼ばれるほどにまで成長し、とある計画を企てます。
それが、人類をウタの仮想世界(ウタワールド)に取り込む「新時代計画」です。
現実に苦しむ人々を救い出し「争いも貧困もない平和な仮想世界で幸せに生きよう」という、一見魅力的な計画に思えますが、実際は「一方的な幸せ」を押し付けているだけの自己中心的な計画でした。
現実世界に帰りたいというファンに対して逆ギレするウタ。
自分の提案に従わないルフィに対して攻撃するウタ。
幼馴染が大切にする麦わら帽子を引き裂くウタ。
現実世界ではないにしても、あまりにも酷く、危険な思想の持ち主でした。

いや、ウタに全然感情移入できないし。

こう思ったワンピースファンの方はきっと多いのではないでしょうか。
映画公開前に放送されたとある番組で、「スタッフ全員ウタが大好き」という情報を耳にしました。
そのため、どれほど愛されるキャラクターなんだろうと期待していたのですが、全く予想に反したキャラクター設定でした。
もちろん、キャラクターデザインは可愛いですし、愛すべきところはありますが、Twitterの検索窓で「ウタ」と入力すると「嫌い」「メンヘラ」という関連ワードがトップに出てくるほど、苦手なファンが多いようです。

赤髪海賊団(シャンクス)の登場

物語は佳境に入り、ウタは歌の魔王「トットムジカ」を再び呼び起こしてしまいます。
このトットムジカを倒す方法は、「仮想世界」と「現実世界」で同時に攻撃をするということ。
そのため、仮想世界の「麦わらの一味」と、ウタを救いにきた現実世界の「赤髪海賊団」が共闘することになるのです。
ここでようやく「赤髪のシャンクス」が登場です。

いや、登場するの遅すぎ。もう物語の終盤。

もちろん、回想シーンでシャンクスは何度か登場していましたが、「FILM RED」というタイトルの割には出番は少なく、シャンクスに期待をしていたワンピースファンは「物足りなさ」を感じたことでしょう。
むしろ「FILM UTA」にした方が良いくらい、ウタがメイン(主人公)の映画となっていました。
また、麦わらの一味と赤髪海賊団の共闘シーンでは、「ウソップ」と「ヤソップ」が見聞色の覇気で会話をするシーンがあります。
ヤソップの覇気を感じたのか、突然ウソップが「オヤジ!?」と言い出し、「やっと気付いたかバカ息子」とヤソップから返答があるのです。

いや、漫画でも会ってないのに映画で会っていいんかい。

正直、二人の再会は漫画本編でしてほしかったです。
正確にいうと「まだ会ってはいません」が、会話が成立していたので会ったも同然だと言えるでしょう。
ルフィとシャンクスに関しては、現実世界で寝ているルフィのもとに、シャンクスの姿がありました。
麦わら帽子でルフィの顔を上手く隠していたので「まだ対面を果たしていない」ということにしたいのかもしれませんが、受け手によっては「本編より先に会ってしまった」と捉える人がいてもおかしくないでしょう。

シャンクスの覇王色の覇気

「麦わらの一味」と「赤髪海賊団」の共闘で、トットムジカを倒した仮想世界のルフィと現実世界のシャンクス。
その現実世界のシャンクスの周りには、ウタを捕えようとする海軍「黄猿」や「藤虎」の姿がありました。
しかしシャンクスは「ウタは俺の娘だ。それを奪おうってんなら、死ぬ気でこい」と覇王色の覇気を飛ばし、海軍たちを圧倒します。
すると海軍大将「藤虎」が、「やめておきやしょう。市民の皆さんもいるところで戦争をおっぱじめるのは~」と言い、あっさり引いてしまうのです。

いや、大将2人いるなら頑張れよ。

もちろん、物語の終盤でこれから「赤髪海賊団 vs 海軍」の戦いが見られるとは思っていませんでしたが、ついついツッコミたくなるくらい、シャンクスに弱腰の海軍大将でした。
一般市民からすると四皇は「凶悪犯」な訳ですから、海軍大将2人いるのなら戦ってほしいものです。

死にゆくウタ

眠らない(能力を解除させない)ために、ずっと「ネズキノコ」という毒キノコを食べ続けていたウタ。
その副作用でウタは最後に死んでしまいます。
ただ正直、映画では「死んだのか」「死んでいないのか」よくわからない曖昧な描写でした。
旅立つシャンクスの船に「棺桶」のようなものが乗っていたので、筆者は「死んじゃったんだな」と判断したのですが、確信には至りませんでした。
ただ、映画の特典「40億巻」には「死にゆくウタ」と書かれていたこともあり、また既に販売されている本作の「小説」には、
「船の中央には棺のようなものが置かれている」
「シャンクスはウタの眠った棺に背を向け」
と記されていたので、やはりウタは死亡したものと考えられます。
そんなお通夜状態のシャンクスの船を、ルフィは遠くから見て何かを悟りました。
その後、ひと間あり、
「海賊王に 俺はなる!!」
といういつもの台詞、いつものトーンで映画を締めくくりました。

いや、よくあの重苦しい雰囲気でそんなこと言えたな。

さすがに流れが微妙すぎて違和感しかありませんでした。
もう少し空気を読もうよと。
また、ウタの棺に関しても、何故ゴードンではなくシャンクスがという突っ込みポイントもあります。
先述した通り、ウタを育てた期間は「シャンクスが9年」「ゴードンが12年」と、ゴードンの方が長いです。
しかもシャンクスの9年は、記憶のない赤ん坊時代を含めた9年ですから、ゴードンとの方が遥かに想い出があるハズです。
にもかかわらず、ゴードンではなくシャンクスが連れ帰っているのもツッコミたくなるポイントでした。
長くなりましたが、以上がおおまかな「あらすじ」と「感想」になります。



ONE PIECE FILM REDが「ひどい」と言われる10の理由

では、本題の「なぜ本作はここまで酷評されるのか」について、解説していきたいと思います。
ONE PIECE FILM REDが「ひどい」と言われる理由を10個挙げましたのでご覧ください。

ツッコミどころが満載

これは、上記でも散々述べさせて頂きましたが、とにかくツッコミどころが多かったです。
例えば、今回のウタの計画。
赤髪海賊団がエレジアを滅ぼしたと思い込み、そのせいで海賊を嫌っているのならまだ理解できますが、実は「エレジアを滅ぼしたのは自分」だということを、大人になったウタは知っているのです。
にもかかわらず、今回の暴挙に出ているわけですから、単なる「メンヘラ」だと言われるのも仕方がありません。
そもそも「真実を知らずに」計画を実行し、「真実を知って」計画を止める方が綺麗なストーリーになるハズです。
このように、脚本にツッコミどころが多かったという点も、酷評される理由のひとつだと考えます。

ギャグシーンがだだスベリ

脚本(ストーリー)だけでなく、演出に関してもひどい部分がありました。
例えば、中盤あたりから登場するハートの海賊団「ベポ(BEPO)」の「すいません」というギャグシーン。
恐らく笑かしにきているんだろうなと感じましたが、満員の客席からはクスリとも笑い声が聞こえてきませんでした。
「シーン」となりすぎていて、少し心配してしまったほどです。
5歳くらいの子供だったら面白いのかもしれませんが、大人のファンが多いワンピースですから、わざわざ「作品の質」を下げかねないギャグを入れる必要はなかったのではないかと考えます。

ウタの曲が多すぎてミュージックビデオみたい

これは、様々なレビューサイトで一番多く投稿されている酷評ではないでしょうか。
本作のテーマが「音楽」なので仕方がないことかもしれませんが、作中にはとにかく「歌のシーン」が多いです。
世界の歌姫である「ウタ」が劇中で歌唱する曲は
① 新時代(楽曲提供:中田ヤスタカ)
② 私は最強(楽曲提供:Mrs. GREEN APPLE)
③ 逆光(楽曲提供:Vaundy)
④ ウタカタララバイ(楽曲提供:FAKE TYPE.)
⑤ Tot Musica(楽曲提供:澤野弘之)
⑥ 世界のつづき(楽曲提供:折坂悠太)
⑦ 風のゆくえ(楽曲提供:秦基博)
の計7曲。
1曲あたり「2分」と考えても、約14分が歌唱シーンに割かれてしまうことになります。
上映時間は115分(1時間55分)なので、この内の14分はかなり大きな割合だと言えるのではないでしょうか。
また【歌 → ストーリー → 歌 → ストーリー】の繰り返しのためテンポが出にくく、「大作のミュージックビデオみたい」という意見も頷けます。
世間ではミュージカル作品が苦手だという方がいるように、この作品も「好き嫌い」がハッキリしてしまう映画だと言えるでしょう。

ウタの歌声がAdoに聞こえてしまう

これも、上記に続き最も多い酷評だったのですが、ウタの歌声が「Ado」に聞こえてしまうという点です。
Adoは歌唱力も高く、素晴らしいアーティストであることは間違いありませんが、声質に「強いクセ」を持っており、歌声を聴くだけでAdoだとわかってしまう特徴があります。
そのため、見た目は「ウタ」でも、どうしても「Ado」が歌っているようにしか見えないのです。
これは正直キャスティングミスだと思います。
もう一度いいますが、Adoは素晴らしい歌手であり、きた仕事をまっとうしているだけなので何ひとつ悪くありません。
ただ「合う」「合わない」があり、今回は「合わない」と思う人の方が多かったように思えます。
「Ado」という文字を逆さにすると「Oda」になり、もしかしたら製作陣で運命を感じたのかもしれませんが、ワンピースファンの反応を見ていると、もっと他に適任者がいたのではないかと感じざるを得ません。

ボイスキャストと歌唱キャストを分けない方が良い

これも上記に繋がりますが、Adoの歌声はクセが強いので、歌唱パートとなると声が変わって聞こえます。
気にならない人は気にならないかもしれませんが、気になる人はかなり気になります。
「ボイスキャスト(名塚佳織)」と「歌唱キャスト(Ado)」が変わることについては、ルフィの声を担当する田中真弓氏も懸念しておりました。
しかし、本作では全く気にならなかったと映画公開前の番組でコメントしています。
立場上、そう言わざるを得なかったのかもしれませんが、筆者的にも「ボイスキャスト」と「歌唱キャスト」は分けない方が良いと考えます。
今では「歌える声優」はたくさんおり、そもそも「名塚佳織」自身も声優兼歌手です。
にもかかわらず、わざわざAdoをキャスティングしたのは「大人の事情」があったからだろうなと考えます。



公開前から煽りすぎ(ハードルを上げ過ぎ)

公開前から煽りすぎ(ハードルを上げ過ぎ)たのも、批判を生んだ大きな要因だと考えます。
冒頭でもお伝えした通り、今回の映画「ONE PIECE FILM RED」の番宣は異常なものでした。
様々なTV番組やWEBメディアと連動し、いたる所で「シャンクス」を全面に押し出していました。
シャンクスは本編でも謎に包まれたキャラクターですから、ワンピースファンのハードルはかなり高くなってしまったことでしょう。
そのハードルを多くの方が超えられなかったことから、今回の批判が生まれたと考えます。
筆者は、賛否両論を知った上で「ハードルを30%」にまで下げ鑑賞しにいったので、比較的楽しめた方だと思います。
ただ、もし事前情報なく「期待したまま」観に行っていれば、幻滅していたかもしれません。
結果的に、ワンピースの映画史上「No.1の興行収入」を記録したので、プロモーション的には大成功だったと言えますが、興行収入と顧客満足度にギャップが出来てしまったことは否定できません。

ストーリーに必要のないキャラクターが多すぎ

話題性を呼ぶためか、ストーリーに必要のないキャラクターがあまりにも多すぎだ感じがします。
「麦わらの一味」や「赤髪海賊団」は当然必要ですが、例えば「トラファルガー・ロー」や「ベポ」「バルトロメオ」「カタクリ」「オーブン」「ブリュレ」などは本当に必要だったのでしょうか。
話題性のために無理矢理出した感は否めません。
また、漫画本編で「キッド」と「ロー」にやられたはずの「ビッグマム」を登場させることで、「時系列」がおかしくなってしまうのも事実です。
映画と漫画は「パラレルワールド」なのかもしれませんが、重要な役柄でもないので無理に登場させる必要はなかったのではないかと考えます。

ラスボス「トットムジカ」に魅力が無い

これまでの劇場版ワンピースでは、「金獅子のシキ」や「ゼファー」「ギルド・テゾーロ」「ダグラス・バレット」など、見るからに強いラスボスが存在しました。
しかし今回のラスボスは、ウタが呼び起こした「トットムジカ」で、正直全く魅力を感じませんでした。
恐らく「これまでとは違った強敵」を描きたかったのかと思いますが、バトルシーンを楽しみにしていたワンピースファンは物足りなさを感じたことでしょう。
映画公開前のTVアニメではちょうど「ルフィ vs カイドウ」のバトルシーンがあり、映画並みの作画(クオリティ)で放送されていたので、正直そちらの方が見応えがあったように思えます。
もちろん、毎回同じようなラスボスでは面白みに欠けてしまうためこういった変化球は必要かと思いますが、本作ではワンピースファンが求めていたものと少しズレがあったのかもしれません。

ナルトの「無限月読」鬼滅の刃の「無限列車編」に似たような設定

今回の映画「ONE PIECE FILM RED」では、「現実」と「仮想」の2つの世界を表現したストーリーでした。
仮想世界、いわゆる「メタバース」という、近年ホットなワードでもありますが、アニメ的にはナルトの「無限月読」や、鬼滅の「無限列車編」に似たような設定だったため、特に新鮮味がありませんでした。
漫画本編より先に「ルフィ」と「シャンクス」を会わせるわけにはいかなかったことから恐らくこの設定にしたかと思いますが、今ではごくありふれた設定となっているため、そういった点からも評価が低かったのかもしれません。

大人の事情

ここはあくまでも予想になりますが、恐らく今回の「ONE PIECE FILM RED」は、「鬼滅の刃 無限列車編」を相当ライバル視しているのではないかと考えます。
周知の通り「鬼滅の刃」は社会現象を起こし、2020年10月に公開された「無限列車編」ではあの「千と千尋の神隠し」を抜き、日本歴代興行収入第1位を記録しました。

順位

公開年

作品名

興行収入

1位

2020年

鬼滅の刃 無限列車編

404.3億円

2位

2001年

千と千尋の神隠し

316.8億円

3位

1997年

タイタニック

262.0億円

4位

2014年

アナと雪の女王

255.0億円

5位

2016年

君の名は。

250.3億円

6位

2001年

ハリー・ポッターと賢者の石

203.0億円

7位

1997年

もののけ姫

201.8億円

8位

2004年

ハウルの動く城

196.0億円

9位

2003年

踊る大捜査線 THE MOVIE 2

173.5億円

10位

2002年

ハリー・ポッターと秘密の部屋

173.0億円

11位

2009年

アバター

156.0億円

12位

2008年

崖の上のポニョ

155.0億円

13位

2019年

天気の子

141.9億円

14位

2021年

劇場版 呪術廻戦0

137.5億円

15位

2003年

ラストサムライ

137.0億円


数あるタイトルを総なめにしてきたワンピースも、この「鬼滅の刃 無限列車編」には大差を付けられているのです。
映画の配給会社は、鬼滅が「東宝」でワンピースが「東映」。
間違いなくライバル視しているでしょう。
製作陣の「絶対に鬼滅に勝つ」との強い想いが、「シャンクスを使った過剰な煽り」や「人気歌手(Ado)の起用」に繋がり、結果的に批判が生まれてしまったのかもしれません。

おわりに

いかがでしたでしょうか。
本記事では、マイナス意見ばかり取り上げてしまいましたが、筆者は生粋のワンピースファンです。
だからこそ、鬼滅の刃の記録を塗り替えてほしいと思っております。
ONE PIECE FILM REDは、公開後10日間で観客動員数505万人、興行収入70.6億円を記録しました。
一方、鬼滅の刃 無限列車編は、公開後10日間で観客動員数798万人、興行収入は107.5億円を記録しています。
正直、本作で鬼滅の刃の記録を超えることは相当難しいかと思いますが、いつか「ONE PIECE FILMシリーズ」でこの記録を塗り替えてくれることを心から願っております。



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